栗田研究室kurita Lab.

教授栗田 治 / Osamu Kurita

研究の概要

都市工学・社会工学の研究を行っています。都市には非効率・環境汚染・犯罪などの問題が山積しています。これらを改善し、新都市を設計するには、施策や設計がもたらす結果を記述するモデルを豊富に準備しておくことが必要です。こうした研究をオペレーションズ・リサーチの技術、中でも特に最適化モデル・確率モデル・微分方程式系といった手法で進めてゆくことを目標にしています。

担当講義科目

管理工学輪講、卒業研究、管理工学実験・演習4、管理工学基礎演習Ⅱ、オペレーションズ・リサーチ第2、オペレーションズ・リサーチ第3、都市工学、都市解析のオペレーションズ・リサーチ

研究の特徴

①[都市解析の研究]ドローン宅配の待ち行列モデル

人口減少が続く地域では経営困難から小売店舗が次々に撤退し、買い物が困難な住民が激増しています。こうした住民の食料品等の調達のために期待されているのがドローン(小型無人飛行機)による宅配です。ドローン基地の配置や宅配に利用されるドローンの配備数によって住民へのサービス水準が如何なる影響を受けるか?これを数学モデルやシミュレーションで解明しておくことに今日的な意味がありそうです。<br><br>ドローン基地の立地点 h とドローン配備数 s が平均待ち時間 EW に与える影響

  • 半径3kmの円盤地域でのドローン基地の配置候補

  • ドローン配備数 s [機]

②[都市・建築空間の設計と評価]連絡通路の配置モデル

都市を流れる川にどのように橋を架ければよいか?ツイン高層ビルを結ぶ高架連絡通路はどの高さに設けるべきか?ビル同士を結ぶ駅周辺のデッキの敷設効果はどのように計測できるか?こうした現実的な問題に最適化モデルや都市住民の経路選択行動のモデルに基づいて接近することが可能です。ビル間の連絡デッキと地表の経路の便利な方を人々が選択して利用するとき、利用者の距離分布を記述でき、ツインビルの連絡通路の最適高さがビル高さの約6割であることが数学的に示されます。興味深い結果でしょう?

③[都市施設配置の研究]都市施設の確率的な選択行動に基づく施設配置モデル

複数の代替案の中から自分にとって最も都合の良いものを選ぶ、この行動は私たちの日常生活のそこら中で観察することができます。それを記述するのが非集計選択行動モデル。これを住民の店舗選択行動に当てはめれば、どの規模の店舗を何処に出せばどの程度の収益が上げられるかを記述することができます。さらには地方都市で観られる買い物困難者を救うための出張店舗の運営計画にも資することができそうです。

④[微分方程式モデルの探求]流行現象の微分方程式モデル

自然現象はもちろんのこと、人間社会の中にも、あるものの量が別のあるものの増減に影響を与えつつ変化してゆく様を観ることができます。流行病の伝播と回復、狂牛病に罹患した牛の頭数の推移、流言の伝播と収束…枚挙に暇なしです。こうした現象を記述するのが微分方程式系のモデルです。狂牛病に罹患していたにも関わらず人間の胃袋に収まってしまった牛が何頭くらい存在したか?都道府県別のカップ麺のブーム到来と収束の様子はどうだったか?こうした人間くさくて興味深い現象も数学的に解明することが可能なのです。

⑤[都市施設の経済性工学]最適施設数のモデル

公共施設の建設・運営費は住民の税金によってまかなわれます。そして施設を訪れるための交通費も住民が負担します。同一種の複数の施設(例えば市立図書館や市役所の出張所)の数を、住民が負担する“施設建設・運営費+利用時の交通費”の総額を最小にするように(つまり合理的に)決めることに意味がありそうです。いくつかの想定の下で、最適な施設の数が 〖(都市人口)〗^(2/3)×〖(都市面積)〗^(1/3) に比例することが示されます。こんな面白い研究も行っています。物理学によく観られるような次元解析的関係式が、都市・地域の分野にも存在するのです。

教育目標・方針

(i) 現実観察に基づく数理モデルの作成 → (ii) 数学的な解の導出 → (iii) 問題の所有者への計画の提案。これはオペレーションズ・リサーチという技術の定番のやり方です。現実観察と計画の提案を支えるのは国語の力であり、定式化と数学的な解の導出には数学力やコンピュータによるプログラミングの技術が必要とされます。こうした学術を学部や大学院の講義を通じて受講生に身につけていただきたい。そして研究室での卒業論文&修士論文&博士論文の執筆を通じて、分析技術を高めて欲しい。そして、社会に出てそれを人々のために役立てて欲しい。そうした希望をエネルギー源として学生諸君に接しています。

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