松林研究室matsubayashi Lab.

教授松林 伸生 / Nobuo Matsubayashi

研究の概要

競争環境下での企業の意思決定問題を、ゲーム理論をはじめとする経済学的アプローチにより分析する研究を行っています。具体的には、競争下でのマーケティング戦略や企業間の戦略的提携・ネットワーク形成の問題を中心に取り組んでいます。「応用のための理論を構築する」ことを目指して研究を進めています。

担当講義科目

管理工学輪講、卒業研究、管理工学実験・演習6、経済原論、数理経済学、ビジネスエコノミクス特論

研究の特徴

企業が、競争環境の中でどのようなビジネス戦略をとるべきかについて、ゲーム理論や経済学の手法を用い、数理モデルを用いて科学的に考えていきます。現実の経営の問題から面白そう(&分析できそう)なテーマを拾ってきますが、その分析はモデルを通じて理論的に行っていきます。そのことによって、ケース(事例)分析でもデータ(実証)分析でも見出せないような、興味深い戦略的示唆を得ることが目標です。特に、まだ実証データが十分に揃っていないような新しいビジネスモデルに対して、事例に縛られることなく、数理モデル分析に基づき論理だけで「こういう状況であるならば、こうした方が良い」というメッセージを得ることを目的としています(図1)。以下に主な研究テーマを挙げます。

①競争下でのマーケティング戦略の問題

価格(ダイナミックプライシングなど)、製品(マス・カスタマイゼーションなど)、流通(オムニチャネル戦略など)、広告(インストア広告など)、といったマーケティングの比較的新しい概念・手法に関連する意思決定について、ゲーム理論的な知見を引き出します。単体では優れていると考えられていること、例えばコスト改善や品質向上といったことですら、競争相手がいる場合にはその有利性が一変する場合が多々あります。モデル分析によって、こういった事実の存在を背後の理屈とともに明らかにします。

  • 図1:研究のスタンス

②サプライチェーンにおける企業間のコーディネーション(利害調整)

製造企業、卸売業者、運送業者、小売店など、1つの製品の提供にはたくさんの企業が関わっていますが、それぞれが自身の利益を高くしようと振る舞うことで、結果的にサプライチェーン全体としての最適解から大きく逸脱し、全員が損をしてしまう可能性すらあります。このような現象の理解と、その解決法(契約方法など)の提案について、ゲーム理論的にアプローチします。

③企業間の戦略的提携/ネットワーク形成に関する協力ゲームの応用

同業/異業種間での技術提携や同業他社間での共同配送など、企業間での提携が現実に多く見られますが、こういった提携によって得られた共同利益を、どのように各提携メンバー間で分配すべきかについて、特に、メンバー数が多く、かつメンバー間で複雑なネットワークを形成しているようなケースを対象に、協力ゲームの理論を用いて理論的に分析します。

最近力を入れ出したテーマ

  • 企業の意思決定問題への行動経済学の知見の援用
  • プラットフォームビジネスに関するゲーム理論的分析

教育目標・方針

理系学部の利点を活かし、基本的に大学院生との二人三脚によって研究を遂行しています。学生さんの持つ、ビジネスに対する関心の高さとこれまで培った数学の力が、研究の強力な推進力となり、毎年多くの研究発表(海外学術雑誌への論文掲載、国内・国際会議での口頭発表)を行っています。そして学生さんには、こうした研究活動を通じて、仮説の構築力や現象に対する洞察力(「なぜ?」を把握する力)を涵養し、社会に出てからのアドバンテージとしてもらうことを願っています。ビジネスの世界ではデータ活用は必須ですが、一方でそのためにはこういった素養が不可欠であり、管理工学科ならではのバランスの取れた人材の輩出に寄与することを目指しています。

就職

管理工学科らしく多様な業界に就職していますが、特に大学院生においてコンサルティング会社に就職する比率が高いことが特徴です。

参考サイト

「学問のすゝめ」https://www.st.keio.ac.jp/education/learning/1811.html

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