中嶋研究室nakajima Lab.

専任講師中嶋良介 / Ryosuke Nakajima

研究の概要

モノづくりの生産現場を対象として、工業製品の品質やコスト、納期、そこで働く作業者の安全や疲労に関する問題解決を目指したIE(インダストリアル・エンジニアリング)研究を行っています。また、製造業のみならず、建設業やサービス業などの他業種へのIEの適用可能範囲の拡大に向けた研究も進めています。

担当講義科目

経済性工学、生産管理、インダストリアル・エンジニアリング特論、理工学基礎実験、管理工学実験・演習2、管理工学輪講、卒業研究

研究の特徴

IEは実学ですので、生産現場に貢献する研究を推進することを目指して、現場で役立つ方法論の考案やシステムの開発に関する研究を進めています。研究を推進する上では、IEの考え方をベースに、人間工学的なアプローチで実験を計画し、被験者実験を通じて得られる実験データを分析することで新たな知見を得たり、機械学習的なアプローチでトライ&エラーを繰り返しながらシステムを開発したりします。すなわち、研究の目的に合わせて手段を検討していきます。これまでの代表的な研究テーマを以下に示します。

1 人間の作業改善・作業設計・作業訓練に関する研究(IE、人間工学的アプローチ)

生産現場では製品の見た目の品質を保証する目的で、外観検査という作業が行われています。例えば、ある製品では縦1000mm×横1000㎜の製品上にある1mm以上のキズや汚れ、表面の凹凸、塗料の色むらなどの欠点を10~20秒程度で検出することが求められていますが、これは大変な作業だと思いませんか?生産現場には、外観検査のように“正確かつ効率的に状況を認識し、その状況に合わせて上手く意思決定することが求められる作業”が多くあります。このような作業を対象として、作業の目的に合わせて作業環境や作業方法を改善・設計し、新人作業者への訓練のあり方を考案する方法論について研究しています。

2 人間の作業支援に関する研究(IE、機械学習、センシング技術、人・機械の共生デザインアプローチ)

人間は万能ではないので苦手な作業が多々あり、当然ですが作業時間が経過するにつれて疲れも溜まります。このような作業に対して、人間がやるべき作業(あるいは、やらなければならない作業)とそうでない作業に分類し、後者を機械化・自動化して人間の作業を支援するための技術について研究しています。その際、人間特性を理解した上で、人間中心型の作業デザインに配慮するように心掛けています。特に、視覚探索作業はディープラーニングを用いたアプローチとの相性が良いので、現在は上記の外観検査の作業支援システムの開発・実用化に力を入れています。

3 IE技術の他分野への応用に関する研究

例えば建設業において、脚立やはしごなどの用具はその簡便さから非常に多く利用されていますが、脚立等に起因する休業4日以上の死傷者数は年間で3,800人を超えています。このような労働災害を防止するためには、脚立等の正しい使用方法を定義した上で、作業環境に合わせて用具の種類を選択したり、作業者に正しい使用方法を訓練・教育したり、その使用方法が正しく守られているかを管理したりすることが求められます。これは、まさにこれまで製造業を中心に取り組まれているIE改善活動のフレームワークそのものであり、IEの知見・経験・技術が他業種へも積極的に活用されるべきであると考えています。そこで、医療や福祉(レントゲン診断、巡回)、介護(重筋作業のワークロード)、土木(構造物のメンテナンス)など、製造業以外の現場の問題をIE視点で捉えた上で、問題発見・問題解決に取り組むことで、IEの適用可能範囲の拡大を目指した研究も進めていきたいと考えています。その一環として、現在はカメラで撮影した画像から脚立上の作業者の重心挙動を推定し、転落の危険を検知したらアラートするような安全管理システムの開発も進めています。

教育目標・方針

実際に現場に赴き、現場で起こっている現象をよく観察したり、データを収集して分析したり、あるいは現場の実務担当者の方にヒアリングしたりしながら、学生が自ら問題を発見する能力(問題発見力)を高めていきます。また、発見した問題を定義・モデル化し、モデルの上で様々に操作して解決策を考案した上で、現場に適用して問題を解決する能力(問題解決力)も高めていきます。さらに、研究を推進する中で、学生が自らの考えを主張し、他者の考えを理解した上で建設的な議論ができる能力(説明力)も高め、自分の研究が世の中に貢献する(現場で活用される)喜びを感じてもらえるように、教員も学生もともに学んでいきます。

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